水銀廃棄物
水銀廃棄物について
「水銀に関する水俣条約(以下「条約」と略す。)」の締結国が我が国を含めて50カ国に達し、規定の発効要件が満たされたため、平成29年8月16日に発効されました。(平成30年8月20日現在85カ国が締結済)
本条例に基づいて水銀対策を進めていく必要性があるため、国内では、水銀汚染防止法の制定、大気汚染防止法や廃棄物処理法施行令等の改正が行われました。
これにより、従来有価物取引の優等生だった水銀の、有価物としての水銀回収のインセンティブが減り、埋立処分される廃水銀製品がふえることが危惧されました。
国内の水銀廃棄物対策に関しては着々と廃棄物処理法の政省令改正作業が進められ、条約の発効いかんにかかわらず、国内規制を段階的に強化する段取りで進められてきました。
その第一段階となる規制措置は平成28年4月1日に施行がされています。
「二次規制」となる平成29年10月1日からの施行には残りの規制措置を施行すべく平成29年6月9日に廃棄物処理法施行規則等の公布がなされ、平成29年8月8日には施行にむけて環境省課長通知がなされ、愛知県でも平成29年9月13日に対応に向けた産業廃棄物処理業者等への通知がなされています。
排水銀規制、先行実施
水銀廃棄物として規制対象となるのは、大別して①廃金属水銀②水銀汚染物③水銀使用製品産業廃棄物の3つです。このうち、従来有価物として取り扱われることの多かった金属水銀について、先行して規制措置を講じました。
具体的には、一般廃棄物として排出・回収された水銀含有製品等から回収された水銀は「特別管理一般廃棄物」に、水銀使用製品廃棄物から水銀を回収する施設をはじめ水銀使用製品の製造施設、国や自治体、大学、その他企業などの試験研究施設等(6月9日の二次規制により該当する施設が保健所等9施設が追加されています。)で生じた水銀を「特別管理産業廃棄物」に、それぞれ環境省令に基づいて指定しています。
これらについては、収集・運搬・保管の各規準について漏出防止などの追加措置を適用、平成28年4月1日付けで施行されました。
環境省から市町村向けに平成27年12月に「家庭から排出される水銀使用廃製品の分別回収ガイドライン」が出されています。
図 水銀廃棄物の分類
下線:水俣条約を踏まえた廃棄物処理法施工令改正(平成27年)により新たに定義されたもの
斜体:例示
:水銀回収義務付け対象
※1 一日当たりの処理能力が5トン以上の一般廃棄物焼却施設から発生するばいじんは特別管理一般廃棄物に該当する
※2 廃酸、廃アルカリについては15mg/Lを超えて含有するもの
※3 廃酸、廃アルカリについては1000mg/L以上含有するもの
規制基準などは二次規制で確立
二次規制で、「廃水銀等」の処分方法の強化(硫化・固定化の基準整備)、「水銀汚染物」の処理基準の強化、「水銀使用製品産業廃棄物」の処理基準の強化などがされました(上図参照)。
このうち「特別管理廃棄物」に指定された廃水銀等については、処分基準と埋立基準を強化しています。具体的には、環境省令に基づいて精製したのち硫化・固形化して、処理を行います。
処理は判定基準(0.005㎎/L)を下回る場合は、分散・混合・流出防止・雨水侵入をさせないなどの追加措置を講じた上で管理型最終処分場での処分を認めています。基準超過の場合は遮断型処分場での処分が義務付けられています。
一方、水銀やその化合物が含まれている「ばいじん、燃え殻、汚泥、廃酸、廃アルカリ、鉱さい」など、いわゆる水銀汚染物に関しては15㎎/㎏(廃酸、廃アルカリは15㎎/L)以上を含むものを「水銀含有ばいじん等」に指定して規制を強化しています。
現状では、水銀を高濃度に含む汚染物からは水銀回収が行われており、低濃度の汚染物は廃棄物処理法に基づいて埋立処分されています。
しかし、今後、条約により水銀回収のインセンティブが減り、水銀を高濃度に含む汚染物が埋立処分される可能性があるため、通常の産廃処理基準に加えて追加的基準を課すなど、規制強化を図っています。
具体的には、産業廃棄物収集・運搬業、処分業、産業廃棄物処理施設の許可において取扱いを明らかにするとともに、委託契約書とマニフェストへの記載を義務付けています。廃棄物データーシートへの記載も求められます。
さらに、「水銀含有ばいじん等」のうち1,000㎎/㎏以上の水銀を含むものの処分に際しては、焙焼や加熱工程によりあらかじめ水銀を回収することが義務付けられています。
併せて水銀含有特別管理産業廃棄物で1,000㎎/㎏超のものも同様に水銀の回収が義務付けられます。
水銀使用製品産業廃棄物
「水銀使用製品廃棄物」は、水銀による環境の汚染の防止に関する法律(水銀汚染防止法)で、「既存用途水銀使用製品、新用途水銀使用製品」としてリスト化されたものを指します。
具体例としては、水銀含有電池、スイッチ、蛍光ランプ、農薬、顔料、気圧計、温度計、医薬品など。
このうち産業廃棄物として排出され環境大臣が定める38品目を「水銀使用製品産業廃棄物」として指定し規制が強化されます。
(水銀使用製品産業廃棄物は、平成29年6月に「水銀廃棄物ガイドライン」のなかで水銀使用製品産業廃棄物になるものを具体的にとりあげているので、一読することをお勧めします。)
具体的には
- 収集運搬時は他の廃棄物との混合禁止、破砕することがないような方法により行う。
(課長通知で、パッカー車への投入禁止となる。) - 中間処理は選別、破砕、切断時の大気への飛散防止措置を講じる。
水銀使用製品産業廃棄物の処分又は再生を行う場合、「水銀又はその化合物が大気中 に飛散しないように必要な措置を講ずること。」とされています。
このため、破砕施設は、破砕部が密閉構造で気体として発生した水銀を集塵し、吸着できる装置である必要があります。(平成12 年3月30 日付け12 廃対第140 号参照) - 最終処分は安定型処分場への埋立禁止。
ここで注意したいのは、平成29年10月1日以降、水銀使用製品産業廃棄物は安定型処分場に埋め立てが禁止されている点です。
(許可証には、品目の下欄に「上記○品目は、水銀使用製品産業廃棄物は除く。」と表記されています。 - 産業廃棄物収集運搬業、処分業、産業廃棄物処理施設許可において取扱いを明示※1、委託契約書とマニフェスへの記載を義務付け
※1:水銀使用製品産業廃棄物を取り扱っている産業廃棄物処理業者の許可の品目に( )書きで水銀使用製品産業廃棄物を含む)という記載が平成29年10月1日から必要になっています。書換えしていない場合は、水銀使用製品産業廃棄物が取り扱えるか十分確認してください。
愛知県の例
蛍光管の粉砕
- 従来
- 産業廃棄物の種類:金属くず(自動車等破砕物を除く。)、ガラスくず・コンクリートくず(工作物の新築、改
築又は除去に伴って生じたものを除く。)及び陶磁器くず(自動車等破砕物及び石綿含有産業廃棄物を除く。)
以上2品目 - 書換え後
- 産業廃棄物の種類:金属くず(自動車等破砕物を除く。)、ガラスくず・コンクリートくず(工作物の新築、改
築又は除去に伴って生じたものを除く。)及び陶磁器くず(自動車等破砕物及び石綿含有産業廃棄物を除く。)
以上2品目(水銀使用製品産業廃棄物を含む。)
○委託契約書:委託する廃棄物の種類に「水銀使用製品産業廃棄物」又は「水銀含有ばいじん等」が含まれることを明記する
契約書の変更箇所 第3条(適正処理に必要な情報の提供)
1 甲は、産業廃棄物の適正な処理のために必要な以下の情報を、あらかじめ書面をもって乙に提供しなければならない。以下の情報を具体化した「廃棄物データシート」(環境省の「廃棄物情報の提供に関するガイドライン(第2版)」を参照)の項目を参考に書面の作成を行うものとする。
ア〜オ 変更なし
カ 石綿含有産業廃棄物又は特定産業廃棄物、水銀使用製品産業廃棄物又は水銀含有ばいじん等が含まれる場合は、その事項
キ 変更なし
○マニフェスト:産業廃棄物の種類欄に「水銀使用製品産業廃棄物」又は「水銀含有ばいじん等」が含まれること、また、その数量を記載すること。
(公社)全国産業廃棄物連合会からのお知らせによれば、この変更に対応した産業廃棄物管理票が頒布されるのは、平成29年12 月頃となる見込みです。
平成29 年10 月1 日以降に「水銀使用製品産業廃棄物」又は「水銀含有ばいじん等」を取り扱う場合であって、現行の産業廃棄物管理票を用いる場合には、種類(普通の産業廃棄物)の欄、もしくは、備考・通信欄にその旨を記載して使用いただければ問題ありません。
○帳簿:水銀使用製品産業廃棄物」又は「水銀含有ばいじん等」に係るものであることを明記する。
○廃棄物保管場所の掲示板:産業廃棄物の種類欄に水銀使用製品産業廃棄物」又は「水銀含有ばいじん等」が含まれることを明記する。
図 5.3.1 水銀使用製品産業廃棄物の保管施設の表示の例
水銀廃棄物をより理解するための窓口・参考資料等
- 〇環境省ウェブサイト(全般)
・水銀廃棄物関係(環境省ウェブサイト)
・水銀大気排出対策(環境省ウェブサイト)
・水銀汚染防止法関係 - 〇経済産業省ウェブサイト(全般)
- 〇国連環境計画(UNEP)ウェブサイト
- 〇輸出入関連(経済産業省ウェブサイト)
- 〇野村興産㈱(水銀リサイクル処理企業)のウェブサイト
- ・水銀廃棄物ガイドライン
平成29年6月 環境省 - ・廃棄物処理法施行令等の改正に関するQ&A
平成29年9月 環境省 - ・よくある質問と回答(水銀廃棄物関係)
平成29年11月 愛知県 - ・排出ガス中の水銀測定法(環境省告示第94号)
- ・水銀大気排出規制に関する主な質疑応答
平成29年2月 環境省 - ・産業廃棄物の検定方法に係る分析操作マニュアル
平成25年5月 環境省 - ・廃棄物関係試料の分析に係る検査マニュアル
平成28年3月 愛知県